人の記憶の仕組み

覚えていたいことを忘れてしまったり、忘れたいことをいつまでも覚えていたりと記憶の仕組みはとても複雑です。一体どのように情報は脳に記憶されるのでしょう。

脳の働き

人間の脳は重さ1.4キロほどで、グレープフルーツくらいの大きさです。脳には約1,000億ものニューロン(神経細胞)が詰め込まれていて想像もできないような複雑なネットワークを形成しています。一つのニューロンは他の10万ものニューロンとつながっており、それによって脳は膨大な量の情報を処理でき、また保持することもできています。必要な時にそこから情報を取り出します。

記憶力の種類

記憶には3つの段階があります。符号化・貯蔵・想起です。脳は情報を知覚するとそれを符号化します。そしてそれを貯蔵し後で思い起こせるようにします。「最近記憶量が悪くなった・・」というようなセリフを聞きますが、記憶は符号化・貯蔵・想起の3つが働いて達成するものなので、この三段階のいずれかがうまくいかなくなった時に物忘れが生じることになります。記憶は「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」などいくつかに分類できます。感覚記憶というのは嗅覚・視覚・触覚などの感覚からの刺激の情報を受取ります。ストーブに間違って触ってしまった時、脳が「熱い」というのを覚えているのがこの働きです。短期記憶は作業記憶とも呼ばれ、少しの情報を短期間だけ保存します。この記憶があるので頭の中で計算が出来たり、文の後半を聞いたり読んだりする時に前半の内容を覚えていられるのもこの記憶のおかげです。そして一番重要なのは情報をずっと貯蔵しておける長期記憶です。大切な忘れたくない情報はこの長期記憶に収めておきたいですね。

記憶力は伸びる

覚えておきたい情報を短期記憶から長期記憶に移行させるにはいくつかのポイントがあります。情報に感情がかかわると記憶力がアップすることがあります。ですからそれを覚える理由を自分に言い聞かせることは役に立ちます。集中力も重要です。たとえば授業で先生の話を聞いている時に、ノートを取りながら聞くと、集中して話を聞くことができ、あとで振り返ることが出来ます。またある出来事や勉強をしている時に、自分がすでに知っている情報と結びつけて考えることで記憶を呼び起こす助けになります。多くの情報を覚えなくてはいけない時には小さなグループに分けると記憶しやすくなります。電話番号がハイフンで分けられているのもそのためです。声に出して発音したり、絵にしてみたりすることでも記憶に残りやすくなります。そして一番重要なのは復習することです。

記憶は情報を符号化し、貯蔵し、思い起こすことです。脳には不要な情報や古い情報を削除する傾向があるので、自分の脳の仕組みをうまく使えば、覚えておきたいことをいつまでも記憶し、不要なことを忘れることが出来きるのです。